オペラを歌っている歌手は「ソプラノ歌手」「テノール歌手」などその人の得意とする声域(声の高さ)によって名前が分けられています。
実は、この声の高さの分類からさらに「それぞれが持つ声の特徴」によって「声の種類」を細分化していくことができます。
今日はテノール歌手の声の特徴を見ていこうと思います。
そもそもテノール歌手ってどんな歌手?
テノール歌手とは、男性の中でも比較的に高い音が得意な人です。
オペラの中でテノールは主役であることがとても多いです。
そして身分は貴族や王族だけでなく、一般庶民といった幅広い役を演じることのできる音域のため男性歌手のなかでも花形的な存在になります。
軽々として、しなやか。さらに高音で技巧的!な声
まずは「テノール・レッジェーロ」と呼ばれる声の種類です。
レッジェーロはイタリア語で「軽い」という意味です。
その名の通り、軽い声のテノール歌手がこの分類になります。
声に重みは重要視されず、高く軽やかでしなやかなまるで羽のような声が求められます。
オペラ「セヴィリヤの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵はレッジェーロです。
アリア「東の空が微笑み(Ecco ridente in cielo)」
アリア「私の名前を知りたいと(Se il mio nome saper voi bramate)」
があげられます。
ザ・テノール!テノールの代表をはる定番の美声!な声
次は「テノール・リリコ」と呼ばれる声です。最も一般的なテノールの声と言われており、役の数も一番多いであり、実際の人口も多いです。
レッジェーロよりも豊かで広がりがあり、声量も重視されるのがこの声。
しかしそこまで強い声は求められません。
あくまでも、どこかロマンチックな声がリリコです。
オペラ「椿姫」のアルフレードはリリコの歌手が歌います。
アルフレードの歌うアリア「燃える心を(De’miei bollenti spiriti)」は有名ですね。
オペラ「ラ・ボエーム」のロドルフォもリリコです。
アリア「冷たい手を(Che gelida manina)」が有名です。
他にもオペラ「リゴレット」のマントヴァ侯爵もリリコです。
アリア「女心の歌(La donna è mobile)」もリリコの代表作といえるでしょう。
希少価値が出るほどの他を圧倒させるパワーと情熱をもっています!な声
最後は「テノール・ドラマティコ」。
名前から察するように、非常にドラマティックで豊かな声量と声質、パワーをもった声です。
この声は生まれ持ったもの、そして鍛え上げた声が必要になります。
ただ何となくこの声に辿り着くわけではありません。
強靭な喉や、力強く響かせる体が必要になります。
そのため華奢な傾向にある日本人にはなかなか到達できない声だと言われています。
それほどハードルの高い「ドラマティコ」。
その分熱烈な支持があり、多くの聴衆を魅了する声です。
オペラ「オテロ」のオテロがドラマティコの代表作といえます。
全体を通してそのドラマチックな歌声に酔いしれることができますが、オペラのクライマックスで歌われるアリア「私を恐れるものはいない(niun mi tema)」が素晴らしいです。
まとめ
いかがでしたか?
今回は3つに分けました。どれもこれもそれぞれの魅力をもった声です。
声というのは鍛えていって変わる部分と年を重ねることによって変わる部分というのがあります。
そのため、長年リリコとして舞台にたっていたテノール歌手が晩年はドラマティコの役柄にも挑戦するなどもよくある話です。
しかし、同時期にレッジェーロもドラマティコも演じる、ということはありえません。
一人のテノール歌手の人生の声の変容をみていくのもおもしろいかもしれませんね。