ウィーン古典派の巨匠【ハイドン】
この記事のタイトルが少し大袈裟になってしまいましたが…..
日本では、何かとコンサートといえば、古典派の作曲家としてはモーツァルト、ベートーヴェンが主流となっています。
しかし、忘れてはいけないのが、巨匠【ハイドン】です。
オーケストラのコンサートでは、たま〜に、ハイドンのシンフォニー、ピアニストだとコンサートの前半にハイドンのピアノソナタを弾くピアニストもチラホラ。
ハイドンは、どちらかというと、モーツァルトやベートーヴェンのような強烈な個性があるわけでもなく、また、誰もが知っているような有名な曲があるわけでもない?と思われている方もいます。
しかし、私はこの大先生【ハイドン】がいなければ、モーツァルトやベートーヴェンのような作曲家もこの世に存在していないのではないか?とさえ思います。
交響曲・弦楽四重奏曲の父 【ハイドン】の功績
ハイドンは生涯、ほぼ全てのジャンルの音楽を手掛けています。
ピアノソナタ、数多くの交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノトリオ、宗教曲、民謡の編集に至るまで、その数1000曲以上とも言われています。
当時はよく作曲したものが数多く紛失された事もありますが、記録には最低でも700曲は書き残しているとの事です。
交響曲の父、弦楽四重奏曲の父とも呼ばれているハイドンですが、今回はその弦楽四重奏曲を紹介したいと思います。
ハイドンの弦楽四重奏曲Op-76 n.1 第一楽章
中でも、ハイドンの後期に作曲した弦楽四重奏曲は、本当に素晴らしいです。
それでは、少し聴いてみましょう。
こちらは、ハイドンの弦楽四重奏曲Op-76 N.1 の第一楽章。
そして、こちらが楽譜。
冒頭部分から聴いておわかりになると思いますが….
イタリア語で、scalare(スカラーレ)と言って、言葉の意味としては ”登る” または、”段階に分ける” ということです。
テーマ、あるいはモチーフが違う声部に単独で順番に出てくるスタイルの事です。
順番としてはいろいろありますが、大体、バスから始まり→テノール→アルト→ソプラノと順番に登りつめていくケースが多いです。
曲によっては、バス→ソプラノ→テノール→アルトという具合に登場する時もあります。
元々、この 「scalare」という言葉はイタリア語の “scala” から来ていて、”段階” “はしご”という意味で、「scalare」は、”よじ登る”、”段階に分ける”ということです。
音楽用語としては、”音階”として、日本語でいうと “スケール” という意味ですね。
この”スタイル”は、対位法ではよく使われている手法で、ハイドンは実にうまく使っていて、何よりも”エレガント“です。
実際に演奏を聴いている時の”聴覚的“、そして楽譜上での”視覚的” にも、効果的なのです。
ハイドンの弦楽四重奏曲Op-76 n.1 第ニ楽章
そして、こちらが同じく弦楽四重奏 Op-76 N.1の第二楽章です。
この第二楽章の楽譜がこちら。
試しに各声部をピアノで弾いてみてください。
そして、音符と音符の間を横線で結んでいきながら、線を描いてみてください。
すると、各声部の”ライン”(線)が実に美しく描かれているのに気付くことができます。
そこで描かれているカーブのラインに注目してみてください。
その四声部のそれぞれの美しいラインを絡み合わせて、巨匠ハイドンは見事な一つの芸術作品を創作しているのです。
そうです、エレガントなデザイン、まさにこれが対位法の神髄です。
数々の美しいラインを横にも縦にも展開させ、そして、いかにエレガントなスタイルで様々なデザインを組み合わせながら見事に一つの作品をまとめているデザイナーのようです。
このように組み立てていく手法こそが、巨匠ハイドンの凄いところです。
まとめ
ウイーン古典派の大巨匠ハイドンの、エレガントな対位法を十分堪能していただけたでしょうか?
これは個人的な意見ですが、ハイドンが晩年の1797年に作曲した弦楽四重奏曲を聴いてみるのがオススメです。
もちろん、弦楽四重奏だけではなく、交響曲でもハイドンの独自のスタイルは垣間見ることができます。
当然、ピアノソナタにおいても同様です。
ただ何となく、楽譜に書かれてある音符を漠然と弾いているだけでは、聴いている側には何も伝わらないのです。
やはり、楽譜の中に秘められた、数々の “デザイン”を理解しながら、内容を把握していないとちゃんと聞き手に伝わらないのです。
巨匠ハイドンの”エレガントなデザイン”を探してみて、またそれが曲の中でどのように展開しているのか見ていくと、よりピアノを弾く楽しみが増えていくはずです。
機会があれば、そういった目線で、今までとは違った角度からじっくりとハイドンの音楽を聴いてみてくださいね。