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「和声」の最良の教科書【バッハ371コラール】の分析方法

和声法
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「和声」を難しいものと勝手に思い込んでいませんか?

「和声法」や「和声分析」などといった言葉を聞いただけで、なんだか難しいことのように聞こえてしまいますよね。

 

 

今では、音楽高校や音楽大学では、専攻楽器を勉強されている方でも、副科として必ず勉強しないといけないのが、「和声」なのです。

 

 

もちろん、副科なので「作曲科」が勉強するようなことをする必要はありません。

 

 

それに大学などで勉強する時間が限られていることもあり、勉強しても少し時間が経てば忘れてしまいます。

 

 

中には勘違いされている方もたくさんいます。

 

 

それは、「和声法」や「対位法」は、作曲科の人だけが勉強しなくてはいけない科目ではないのです。

 

 

ピアノ科を始め、声楽科・弦楽奏者・吹奏楽・打楽器、ミュージシャンと称するのであれば、それに携わってくる「和声」はしっかりと勉強するべきなのです。

 

 

「和声法」を深く理解することにより、専門にしている楽器のパフォーマンスは明解に変わってきます。

 

 

中には、「そんな難しい知識を知っていたところで、どうなるんだ?」という方もいます。

 

 

しかし、それを”知識”と呼ぶのであれば、それはそれで構わないと思います。

 

 

いずれにせよ、その”知識”を「知らない」より「知っている」方が断然良いのです。

 

 

 

和声分析の概要

①まずは、その楽曲が何調なのかを理解する。

その曲が、何調で書かれているのかを把握する必要があります。

 

当然、バッハのコラールは”転調”することがよくあるので、どの調からどの調に転調したのか、

また、どのような形で転調されたのかを知ることも大切です。

共通和音」としてなのか、それとも「半音階的」に転調しているのか….

これらをリサーチすることは、非常に勉強になります。

 

②それぞれの和音の”機能”を調べる。

その和音が、何調の何度の和音なのか?

 

そして、その和音が基本形なのか、第一転回形なのか、または第二転回形なのか?

 

③非和声音の分析

「非和声音」とは、簡単に言うと、その和音から外れた音の事です。

 

つまり、その和音に含まれていない音のことで、刺繍音経過音繫留音などがあります。

 

バッハのコラールを分析するにあたり、バッハがいかに有効な非和声音の使い方をしているのか見ることも大事です。

 

それでは、実際に少しずつバッハのコラールを見ていきましょう。

 

今回はバッハの371のコラールから10番 ” Aus tiefer Not schrei ich zu dir “を選んでみました。

 

 

 

バッハ 371のコラールから”Aus tiefer Not schrei ich zu dir”

 

これは、ト音記号とヘ音記号で書かれた楽譜です。

 

 

それでは、前回言っていたように、当時の音部記号(ソプラノ記号・アルト記号・テノール記号・バス記号)を使って書いた楽譜と比べてみましょう。

 

同じ曲でも、音部記号が変わるだけで、これだけ容姿が変わってしまいます。

 

 

本来はこの音部記号で分析もした方が良いのですが、慣れるまでに時間がかかると思いますので、とりあえず、今回はト音記号とヘ音記号で見てみましょう。

 

 

 

バッハのコラール 和声分析

❶まずは、調性の確認をします。

 

見たところ、もうこれは、ソのシャープという決定的な音があることから、「イ短調」と確定することができます。

 

最初の和音⇒和音自体は、”ミ”・”ソの♯”・”シ”・”レ”

        ↓

これはイ短調のV7(属七の和音)

        ↓

一番下の音(バス)が “レ”なので、イ短調の属七の第三転回形となります。

 

 

❷その属七の第三転回形が、主調の “I度”の第一転回形に解決しています。

属七の “ソの♯”は “ラ”に、また、同時に属七の第七度音の “レ” は、”ド”に降りて解決しています。

 

 

❸その次の和音は、”ソの♯”・”シ”・”レ”

バス低音が “シ”なので、イ短調の第七度和音(VII)の第一転回形です。

 

 

❹2小節目の和音は、”ラ”  “ド”  “ミ” ⇒イ短調の主和音(I)

 

しかし、この時にト長調の “II度” の和音(ラ・ド・ミ)に「共通和音」として一時、転調しています。

 

❺その次の和音は “ソ” “シ” “レ” ⇒バス低音が “シ”なので、ト長調の主和音 (I)の第一転回形

 

続いて八分音符が見られますが、一時的に “シ”  “レ”  “ファの♯”  “ラ”となりますが、これは、和音の動きというよりは、非和声音としての「経過音」と解釈した方が良いです。

 

➏次にト長調の主和音の第一転回形が、同調のIV度の和音へと進行します。

 

その直後の八分音符も、先ほどと同じく、「経過音」です。

 

❼次の和音、”ファの♯”  “ラ”  “ド” → ト長調の第VII度和音の第一転回形

 

この時、同時に「共通和音」としてイ短調のVI度和音の第一転回形に転調しています。

 

❽そしてフェルマータの和音⇒”ミ” “ソの♯” “シ” ⇒再び、イ短調のVの和音(属七)の基本形

 

………と大ざっぱにみると、こんな感じになります。

 

たったこれだけでも、見るべきところは、このようにたくさん出てきます。

 

 

手書きで少し読みづらいのですが、楽譜上にローマ数字で表記している楽譜がこれです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

バッハのコラールの和声分析、いかがでしたか?

 

 

 

最初は何が何だかよくわからないかもしれません。

 

 

かなり大ざっぱでしたが、こうやって細かく見ていくうちに、バッハの頭の中が少しずつですが見えてくるようになります。

 

 

まずは、「目」から学び、その奥深いバッハのサウンドを「体」でもって感じるようになることも大事です。