意外と学ぶきっかけのない対位法
皆さんが対位法を学びたいと思うのはなぜでしょうか?
対位法を学びたいと思う人の中にはすでに音楽大学を卒業して、学校やピアノ教室の先生として働いている人もいるのかもしれません。
私の知っている限りでは、演奏の専攻で対位法が必修となっている大学は少ないように思えます。つまり対位法を知らなくても音楽大学を卒業できるのです。
そもそも対位法を学ぶためには和声法をしっかり理解している必要があります。
そのために対位法まで学ぶ演奏専攻の学生が少ないのではないかと思います。
社会に出て音楽を教える身になると対位法ということばがときどき現れます。
たとえば、バッハを授業やレッスンで取り上げるときには必ず対位法やフーガという話題が出てくるのではないでしょうか。
生徒さんに「先生、対位法ってなに?」と言われてもなかなか答えられない。
辞書で調べてみても良く分からず実感がもてない。
このように思ったことがあるのでは?
そのようなわけで独学してみようと思っても、なにから始めたらいいのか分からないのではないでしょうか?
独学で対位法を習得するためになにをすべきか一緒に考えてみましょう。
まず前提として和声法の知識が必要です。
和声法をおさらいすることから始めましょう!
対位法の教本にはどんなものがあるの??
対位法にはさまざまな教本があります。私の感じる限りでは和声法の場合と違って、対位法には定番の教本のようなものがないように思えます。
私自身も学生時代に使用していた対位法の教本は、音楽理論の師匠が留学時代に現地で得たものを師匠自身が和訳したものでした。
つまりそれは日本で販売されているものではないわけで、多くの大学ではそれぞれが独自の方法で対位法の授業を開講しているのではないかと思います。
有名な本はいくつかあります。
次の教本が日本国内では有名なのではないでしょうか。
・『対位法』ノエル=ギャロン
・『厳格対位法』山口博史
・『二声対位法』池内友次郎
・『対位法』長谷川良夫
対位法を学ぶために心がけたいこととは!?
教本を選んだら本の中に載っている実例などをピアノで弾き、対位法に感覚的に慣れましょう!
すべての音楽理論に言えることですが、理論は最終的には感性の豊かさが大事になってきます。
なので対位法の教則をすべて暗記したからといって、それは対位法を理解したことにはならないのです。
対位法的な感性を身につける必要があります。
たくさん弾いてたくさん聴きましょう!
そして課題を解くときに私がおすすめする方法は、一つの課題に対して何通りかの答えを作るという方法です。
そしていくつか作り終えた後にそれらを比較吟味し、自分にとって良いと思えたものを一つだけ選びましょう。
選ぶときはなんとなく選ぶのではなく、理由をつけて選ばなければいけません。
そうすることによって自分自身の審美眼が育まれます。
対位法を作曲に応用するために
3声までの対位法を理解できましたら応用しましょう。
対位法の応用といえばやはりカノンやフーガの創作です。
まずバッハの作品をたくさん聴いて分析し、カノンやフーガがどのようなものなのか理解しましょう。
その際にはピストンの『対位法 分析と学習』
山口博史の『フーガ書法』が役に立つかと思います。
対位法と和声法の補い合う関係
3声までのカノンとフーガを書けるようになりましたら、4声以上のカノンとフーガにもチャレンジしましょう。
4声以上の対位法的な楽曲を作る場合は和声法の知識も必要になってきます。
和声法と対位法はお互いが対極にある理論なのではなく、相互的に補い合うものなのです。
両方の知識を元に、やはりまずは楽曲を分析しましょう。
この段階になりましたらバッハだけではなく、ベートーヴェンやワーグナー、ブラームスなどのポリフォニックな楽曲も研究してみましょう!
最終的にはいろいろな作曲家のスタイルで書き分けられることが理想的です。
まとめ:対位法をさらに知るために…
もっと対位法について知りたいと思う方は次の本も読んでみると良いのではないでしょうか。
・『対位法とフーガ講座』ルイージ・ケルビーニ
・『古典対位法』ヨハン・ヨゼフ・フックス(絶版。図書館などで探してみましょう。)
・『フーガ』マルセル・ビッチ
近代の音楽に関心のある人であればシェーンベルクの十二音技法について学んでみることもおすすめします。
十二音技法は実は対位法的な理論なのです。
これも絶版になっている本なのですが、南弘明の『十二音による対位法』を読んでみましょう!
さまざまな時代にさまざまな作曲家によって応用された対位法。対位法の理解によって、音楽そのものの理解がさらに深まることでしょう。
意欲的に対位法に取り組んでみてください!